「子ども同士で揉め事に」
「相続人ではない親族が
 口を挟んでくる」
「自分の力ではどうしようもない」

子ども同士で揉め事に
相続人ではない親族が口を挟んでくる
自分の力ではどうしようもない


 
弁護士 西井

 遺産相続のトラブルは、突発的に発生しているように思われがちですが、実はそんなことはないんです。こと、財産の分け方で揉めたケースは、その噴出までに以下に挙げるような様々な伏線が見られるものです。
 
  □同居、介護したから、当然相続できるという「勘違い」
  □遺産分割協議を切り出すタイミングが「遅い」
  □たぶん相続を放棄してくれるという「兄弟への甘え」
  □同居時の家賃・光熱費、免除に対する「感覚の違い」
  □悪く思われたくないと言い出さない「保身」
  □土地の評価の「計算方法」
  □兄弟が知らない「生前贈与」
 
 つまり、相続の初動における準備が重要になるのです。具体的には、兄弟と話す前に、弁護士や司法書士と事前相談して、遺産分けの内容、想定問答、ロールプレイングをするなど、きちんとアドバイス受けておくことなどでしょう。
 何よりも大切なのは「スピード」。時間が経つにつれ、相続人の周りにいる人たちが、余計な口をだしてくるし、またこちらからの連絡、情報がなければ、相手は悪いことしか考えず、最終的に「猜疑心」がトラブルを呼ぶことになるのです。
 自分が多めに相続したいのなら、低姿勢で他の相続人たちに接することも必要です。法的な理屈で言えばこちらの部が悪い。
相手方が、法律上の権利を主張すれば、確実にこちらが負けることになる。相手にも権利があって、それを譲ってもらえるようお願いをするというスタンスが重要なります。
 相続するかわりに、相手方に支払う金銭を代償金といいますが、土地を相続する時の評価、代償の金額はもめやすいので注意が必要です。土地の評価は、固定資産税評価額、路線価、公示価格、実勢価格と4種類あり、請求する側は高く、支払う側は安くしたいと攻防になるのです。
 もし、雲行きがあやしいと感じたら、迷わず弁護士や司法書士に相談してほしいですね。病気と同じで、早ければ早いほど選択肢が多く、円満に解決できる可能性が高いと言えます。できるだけ、審判や判決に頼らず家族での話し合い(和解)に持っていくのが賢明です。調停審判や裁判判決になれば、2年、3年と時間がかかり、その分肉体的・精神的な負担、弁護士費用などの金銭的な負担も大きくなってしまいますから。
 経験の多い専門家ならば、家族が壊れず円満に解決できるコツを数多く知っています。調停・裁判になる前に、家族での話し合い(和解)に向けて、専門家がどれだけ準備したか、相手にどう説明したか、が運命の分かれ道となるのです。