延命治療のメリット/デメリット

【延命治療のメリット】
本人の死期を延ばすことができる延命治療は、医療措置によって命をつなぐ行為です。そのため、死期を延長できる点は大きなメリットといえるでしょう。
本人の意識があれば、家族と遺言や相続など「終活」についての話し合いの時間を設けられます。さらに、お別れまでの時間を確保できるため、家族と過ごしたり、会いたい人に会ったりなど、本人が望む最期の時を過ごせます。
本人の意識がない場合でも、家族が本人の死を受容する、心の整理をする時間とすることはできるでしょう。
 
【延命治療のデメリット】
いちばん大切なのは、あくまでも本人の意思です。本人がどうしたいのかを事前に確認しておくことが必要です。家族の気持ちを優先して、本人の意思、尊厳に反した延命治療はするべきでありません。いったん始めた延命治療は、かんたんにやめることができない場合も多く、本人の姿をみて、家族が自責の念に堪えられなくなることもあります。
一般的に、自宅で延命治療を受けながら生活することは難しく、病院や施設に入院入所することになるので、経済的な負担が発生します。
 
【延命治療とは】
延命治療とは、厚生労働省において以下のように定義されています。
「延命処置とは生命維持処置を施すことによって、それをしない場合には短期間で死亡することが必至の状態を防ぎ、生命の延長を図る処置・治療のことをいう」
老化にともなう心身の衰弱や病気によって、自分の力だけでは生命の維持が困難な方に対して、一時的に命をつなぐための治療を意味します。延命治療は自力回復の見込みがなく、このまま何もしなければ、余命数ヶ月などと診断された終末期患者を対象に、検討されることが多いです。
 
【延命治療の内容】
主に延命治療とされているのは、以下の3つです。
人工栄養/人工呼吸/人工透析
これらの延命治療は、本人の意思を尊重し決定することが望ましいですが、本人の意思が確認できない状況の場合は、尊厳死宣言書もしくは事前指示書の提示、それがない場合には家族に判断が委ねられます。
 
【人工栄養】
人工栄養とは、口から食事を摂取できない患者に対して、点滴やチューブにて栄養を補う処置のことを指します。
経鼻経管栄養:鼻から管を挿入し栄養を投与する方法
胃ろう:手術にて腹部に直接チューブを設置し、栄養を投与する方法
中心静脈栄養:中心静脈にカテーテルを挿入し、点滴にて栄養を投与する方法
これらの方法は、病状や本人・家族の希望、意識の有無、生活スタイルによって選択されます。また、介護施設を利用する場合は、施設によって対応可能な処置が決められているため、希望する施設に合わせて選択する必要があります。
 
【人工呼吸】
人工呼吸は、自発的に呼吸ができない患者に対して、人工呼吸器を使用し強制的に呼吸を行う処置のことを指します。
人工呼吸が必要な方は回復の見込みがないことが前提のため、延命治療の選択を提示されることは、人工呼吸器を取り外す=生死の判断をすることを意味します。
意識がない状態で、延命のためだけに機械につながれた家族の姿をみるのは、心を痛める方も少なくないでしょう。
 
【人工透析】
人工透析とは、慢性腎不全などで腎機能が低下した患者に対して、機械を使い血液中の老廃物を除去する処置のことを指します。
腎臓が正常に機能していないと、血液中の老廃物や不要な水分を尿として排泄できません。身体の中に老廃物がたまると尿毒症を発症するため、生命の危機に陥ることもあります。
腎機能が低下している方で延命治療を希望する場合は、以後、腎臓の代替機能として、人工透析が生涯にわたり必要となるでしょう。